VRヘッドセットの対象年齢設定状況と小児利用による斜視のリスク

Oculus Riftをはじめとする2眼VRヘッドセットのガイドラインでは、13歳(or12歳)未満の子供の使用は禁止(非推奨)されています。

一体何故だと思いますか?子供には見せられないような過激なコンテンツばかりだから?そんなことはありません。子供が楽しめるコンテンツは沢山あります。

13歳未満のHMDの利用を推奨していない理由、それは子供はVR映像を見ると斜視になるリスクが大人に比べて高いからです。

斜視の発症メカニズムや原因については詳しく解明されていないそうなのですが、「3D映像両目で見る」と斜視を発症するリスクがあります。3D映画とか任天堂3DSとかでも注意喚起ありますよね?あれと全く同じことで、VRも全く例外ではありません。

つまり、Oculus Rift、Playstation VR、HTC Vive、Gear VR、Google Cardboard、ハコスコ(二眼)など、全ての2眼HMDを利用する際に気をつけなければいけません。

特に小さなお子様をお持ちの親御さんは是非本記事を読んでみてください。

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VRには構造上「斜視リスク」が存在する

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そもそも『斜視リスク』とはVRデバイスの不具合や誤作動によって生じるものではなく、構造上起きてしまう仕方ない事なんです。

VR映像は常に同じ距離のスクリーンにピントを合わせ左右に違う映像を見せる事で遠近感を表現し脳を騙す技術です。

実際には3Dじゃないもの(平面の映像)を3D(立体)に見せかける錯覚なわけですから目に負担がかかるのは当たり前ですよね。

 

大人に関してはそこまで過敏にならなくてもいいとはおもいますが、小さなお子さんの場合は要注意です。

まずはコチラをご覧ください。

各HMDの対象年齢設定状況

現在販売されているHMD(VRヘッドセット)の対象年齢設定状況を以下にまとめました。

 デバイス名 推奨年齢
Oculus Rift 13歳以上
ハコスコ 単眼は全年齢
二眼は7歳以上
Playstation VR 12歳以上
HTC Vive 13歳以上推奨
Gear VR 13歳以上
Google Cardboard 明記無し※1

※1 年齢の明記は無いものの、「大人の目の届かないところで、お子様が Cardboard を使用することがないようにしてください」との記載有。

現在販売している商品の内Google Cardboardを除いては軒並み12歳~13歳以上を対象としている事がわかります。

GoogleはHMDでのVR体験を社会科見学や教育の面で活用していく方針を示しているので、今後VRヘッドセットを利用した事で子供達に身体的な問題(斜視など)が起きればかなり大規模な訴訟問題が起きる可能性を危惧している識者の方もいます。

ちなみにコレは元眼科医、脳神経科学者として知られる株式会社ハコスコの社長「藤井直敬」さんもおっしゃっていました。

では次に「斜視」について簡単に学んでおきましょう。

斜視(しゃし)ってなに?

斜視とは、片目は目標物を見ていても、もう一方の目が別の方向を見てしまっている状態の事です。

放っておくと「視力の低下」や「立体視が困難になる」といった身体的な悪影響の他に、外見でとても目立つ為に、幼少期はいじめ、対人恐怖症、コミュニケーション障害なんかも誘発しやすくなります。

VRや3Dの体験をして斜視になっても、大人だと数日で治ったりするんですけど、子供だと手術をしないと完治しない場合もあるので注意が必要です。

斜視について理解できたらさっそく今回の本題にまいります。

  • なぜ子供は斜視になってしまうと治りづらいのか
  • なぜ13歳未満の子供に二眼のHMDが適さないのか

でしたね。

ココからは人体の仕組み、構造を元に説明していきます。

対象年齢設定がある理由は大きく分けて2つあります

①幼少期は立体視細胞の形成途中

そもそも人間が物をどうやって立体だと認識しているかご存じですか?

人の網膜の中には光を取込む「視細胞」という物があり、そこから視神経を通じて脳に信号送り「視覚」となります。その中の「立体視細胞」が物を立体視する際に使われています

※立体視細胞とは人間の動作、物体の距離、ピントを調整して合わせる為に必要な視細胞で、わかりやすく言うと『物を立体に見るための役割を持つ細胞』の事。

そしてこの『立体視細胞は』人間の体が成長するのと同じようにこの視細胞も時間が経つにつれて徐々に発達していくことで物を立体的にとらえられるようになるのです。

つまり生まれたての赤ん坊(生後5カ月くらい)は見る景色のすべてがぼんやりとした平面上の世界に見えているという事。

 

つまり幼少期は「目の使い方」を学んでる段階なので、その発達をVRや3Dの映像で妨げるのは良くないよね、眼に負担のかかるものは避けた方がいいよ、というのがお医者さん達の意見なのです。

立体視細胞はどれくらいで発達するの?

 

両眼視差による立体視はおおよそ生後2ヶ月から2歳頃までで形成され、そこから発達していきますが、

「生後2ヶ月から2歳」の期間に斜視の状態が続くと、その後手術で治療、矯正をしたとしても、モノを立体でみる力(立体視)は困難になる

引用元:Wikipedia

とのことなので注意が必要です。

それと、身体能力に個人差があるように立体視する力も個人によって強弱があり、この立体視細胞の発達は大体6歳くらいまでに完成すると言われています。

ハコスコの年齢制限が7歳以上なのはこれが理由でしょうし、例えばNintendo3DSとかも6歳未満の利用が禁止なのもコレが理由だと思われます。

②瞳孔間距離の考慮

①の理由(立体視細胞)だけだったら『7歳以上ならつかってもいいんじゃねーの?』って思う人も多くいると思います。

たしかに立体視細胞の発達だけを鑑みればそれくらいの年齢設定が出来ていれば問題ないでしょう。しかし先ほど紹介した各社の年齢設定状況をみると12歳~13歳に年齢制限を設けていますよね。

勿論そこにも理由があります。

それは『瞳孔間距離』を考慮しているからです。

瞳孔間距離ってのは黒目と黒目の距離の事ですね。メガネをかけている人は作る時に計測したりするので知っている方も多いでしょう。

瞳孔間距離とVRになんの関係があるの?

なぜこれが年齢制限と関係があるのかというと、人間は成長するにしたがって頭の大きさが変わるからです。頭の大きさが変わるという事は目と目の間の距離(瞳孔間距離)も変わります。

子供は成長も早いですからどんどん頭蓋骨がでかくなりますもんね。

ちなみに瞳孔間距離の発達は一般的に言って10歳程度で完成するので、余裕を持って12歳とか13歳くらいの年齢設定を設けているわけです。

まぁこれに関しては大阪大学医学部付属病院で小児眼科、神経眼科を専門とする大阪大学・不二門尚氏曰く

眼球を含めた空間認知の発達に影響を及ぼさないように、HMDは瞳孔間距離を考慮したものにすべき

「小児の輻湊・調節、眼球運動の発達から見る年齢制限」より

という意見があり、瞳孔間距離を自動調節するなり出来るようになれば問題ないという人もいます。

僕もこれには賛成です。

いずれVRは誰でも体験できるものになる

ここからは僕の私見で医学的な根拠があるわけではありませんが、いずれVRは誰にでも体験できるようになると思ってます。

ていうか瞳孔間距離の調節が出来るヘッドセットなら7歳以上であれば使ってもいいんじゃないかなってのが僕の意見です。勿論ガイドラインがあるならそれに従わなきゃいけないけどね。

その内誰でも体験できるようになると思うんで気楽に待つのが良いと思う。

現在販売されている多くのVRヘッドセットでは瞳孔間距離を調節可能なデバイスも数多く存在していますし、網膜照射型とか他の方法だったら斜視のリスクを改善できる!みたいなニュースが出てくる可能性もあるわけだし。

それに現在確立されていない方法でVR映像を生成する技術が台頭してくる可能性も充分ありますし、年齢制限というのは徐々に引き下げられていくと思われます。

というかむしろ、これからは斜視などの健康面だけでなくその他の複合的な問題点から年齢制限が設けられる可能性の方が高いというのが僕の意見です。

VR技術が浸透した未来に生じる6つの社会問題まとめ

一応最後に言っておきたい事

子供はHMD使っちゃいけませんよって言ってますけど、子供より治りやすいというだけで実際大人でも3D映像を見ることで斜視になる可能性はゼロではありません。

そして斜視が発症する原因やメカニズムは完全には解明されていません。つまり、先天的、後天的なリスクは実は誰にでも存在しているという事です。

この記事であげた、立体視細胞の形成期と瞳孔間距離の問題、VR映像が目の錯覚を利用した表現方法であるかぎり、簡単には解決できないかもしれません。ただこの記事を見てVRは悪い物だと決めつけるようなことはしないで欲しいです。

なるべく多くの人にVRの体験をしてもらいたいものですが、子供にVR映像を見せる場合には充分留意して下さい。

どんな遊びにも危険やリスクはあります。大切なのは「使用者がリスクや健康状態を考慮して遊ぶ事」です。

これから新しい技術によって目にかかる負担を減らしていけるはずですが、まずはVR映像を子供に見せることで生じるリスクに関しては知っておいて損はないかと思います。ではでは

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